工作機械の安全な取り扱い方

各種作業の安全

 

工作機械の取り扱い及び作業における安全

 

1. 工作機械の一般的な注意事項

工作機械を使っての作業は危険を伴い、重大な事故につながる場合もあるので、現場の担当職員の指示にしたがって行動することが何よりも重要である。工作機械は、高速で回転するものや往復運動をするものがほとんどである。ちょっとした不注意や気のゆるみで事故につながることがあるので、安全な作業という点から、次のようなことが一般的な注意事項として挙げられる。

○服装は機械に巻き込まれないような作業に適したものを着用すること。作業服としては袖口を絞ったものがよい。(白衣の着用は好ましくない)

○履物は革靴か底の堅い運動靴をはく。できれば安全靴が望ましい。下駄、スリッパ、サンダルなどは危険なので履かないこと。

○手袋は一般に着用しない。特に切削加工時やボール盤使用時は絶対に着用しないこと。

○安全帽、ヘルメット、保護(防塵)用眼鏡の着用が望ましい。

○機械・工具類は正規のものを使用すること。機械に適した形状及び寸法の工具があるので、工具は正しく使用すること。

○刃物、工作物、工具などの取り付けは入念にかつ確実に行うこと。

○機械の運転には、点検―合図―起動の三動作を励行すること。また、停止の際にも、合図―停止―確認を励行すること。

○運転中は機械のそばを離れないこと。また、異常に気がついたら直ちにスイッチを切って現場の担当職員に知らせること。

○機械を停止するとき、惰力で回転しているものを無理に止めないこと。

○停電したときは、直ちに電源スイッチを切ること。

○作業終了後は、使用した機械・工具類の手入れと掃除を行うこと。

○作業環境に留意するとともに、作業場の整理整頓を常に心掛けること。

 

2. 工作機械

(1)旋盤

○工作物の着脱、切削工具の取り換えは、運転中に行ってはならない。

○工作物の固定はチャックで確実に行うこと。長い工作物を切削するときは、可能なかぎり振れ止めを用い、チャック仕事では、まず心押センタで受けること。

○電源スイッチを入れる前に、チャック締め付け用ハンドルが取り除かれていることを確認すること。

○切削工具は、正しい位置に、作業に支障のない限り、できるだけ短く緩まないように、取り付けること。

○切屑が飛び散る材料の切削には切削部分を囲うか、防護用眼鏡(ゴーグル)を着用する。

○心押台を使用しないときは、ベッドの端に置くか、取り外しておくこと。

○切削開始前に、工作物のチャッキング(取り付け)が充分なされていることを確認すること。

○作業中、のぞきこまないこと。必要なとき以外はできるだけ切削点から身体を遠ざけておくこと。

○切屑や切削油を飛散させないこと。必要に応じて、防護カバーをし、あるいは衝立を使用する。

○ハケなどで切削油を注油するときは、巻込まれないよう注意すること。

加工中の計測やバイトの掃除は、必ず機械を停止してから行うこと。

○荒削り面に手をふれないこと。手袋の使用禁止。

○工作物の材質ならびに切削工具の性質を考慮して、切削条件(回転速度、切り込み、送りなど)を選定し無理な切り込み、送り、切削速度を与えないこと。

工具で切り込んだまま機械を停止してはいけない。必ず切り離してから停止させること。

 

(2)数値制御旋盤

○工作物等の取り付けは確実に行う。(油圧チャック制御の場合は、油圧計を確認する)

○切削工具の取り付け状態および配置を確認する。

○運転に際してはプログラムを入念に点検し、加工手順を確認する。

○初品加工の際はプログラムの点検のみならず、動作確認・各部の干渉を空運転等で確認すること。

○切削中は切屑・切削液、場合によっては折れた工具などが飛ぶ場合があるので、前面カバーを必ず閉め、加工が正常に進んでいるかを常に確認し、異常が生じた場合には速やかに非常停止ボタンを押せるよう、装置の近くの安全な場所にいること。

○操作は単独で行うのが基本である。やむを得ず2名以上で操作する必要のあるときは、互いに充分確認し合って扱う。

○機械の点検・清掃・切屑の除去等は運転中に行わないで、必ず機械を停止してから行うこと。

 

(3)フライス盤(立てフライス盤、横フライス盤等)

○機械のテーブルの上に工具、材料、製品、布片等をのせない。

工作物の固定は治具などを用いてしっかり保持すること。切削開始前に工作物の取り付けが充分なされていることを再確認すること。

○低速度回転に設定し、始動後はしばらく空運転すること。このとき異常音等が生じていないか確認すること。

○切屑が飛散する材料の切削には切削工具(カッタ部分)を囲うか、防護用眼鏡(ゴーグル)を着用する。

○切削工具に袖口を巻き込まれないよう十分注意すること。

 ○切削工具の注油は上から行う。

 ○切削中は切粉に手を触れない。

 ○回転中の刃物軸(アーバ)ごしに手をのばして工具を取らないこと。

○切屑は手にささり易いので注意する。けがき線を見ようとして切屑を指先で払ってはいけない。ハケまたはブラシを必ず使う。

○むやみに早送りは使用しないこと。(早送りを止めてもテーブル送りは動いている)

○測定は必ず回転を停止させてから行う。

○万カのハンドルは抜き差しできるため、足の上に落とさないよう注意する。加工中は、できるだけ外しておく。

 

(4)形削盤

○始動に当たっては、テーブルやラムの運動に注意し、その範囲内に物を置かない。

○刃物の取り付けは、できるだけ短くする。

○切り屑の飛散防止をする。

○自動送りレバーは確実に入れたり切ったりすること。

○工作物の材質ならびに切削工具の性質を考慮して、切削条件を選定する。

○切削開始前に、工作物のチャッキング(取り付け)が充分なされていることを確認すること。

○運転中は、ラムやテーブルの運動方向・移動範囲には立ち入らない。

○運転中のテーブルの上で作業しないこと。

○加工中の工作物の上に手を置かないこと。

○機械の運転中に寸法測定をしたり、けがき線をのぞいたり、手を出したりしないこと。往復連動のため、顔や手に大けがをする危険性がある。

○工作物の取り付け、取り外しは、完全に機械を停止させてから行うこと。

○万カのハンドルは抜き差しできるため、足の上に落とさないよう注意する。加工中は、できるだけ外しておく。

 

(5)精密平面研削盤

○工作物を電磁チャックに取り付ける場合、完全に吸着しているか確認すること。

○研削テーブルの移動中は、テーブルストローク制御用ドッグにより、ストロークの過不足の調節をしてはいけない。

○砥石の回転数が、十分に高速で安定していることを確認すること。

201000mm以上の切り込みをしてはいけない。

○砥石の回転延長線上には立たないこと。

○防護用眼鏡(ゴーグル)を、着用する。

 

(6)ボール盤(大型ボール盤、卓上ボール盤等)

作業中は、いかなる場合でも手袋を使用してはならない。

○ドリルをしっかりとチャックに取り付けること。

○工作物の取り付けが確実に行われているか確認すること。

○工作物の材質ならびに適切なドリル形状、周速度、1回転当たりの送り(送り速度)に見合った切削条件を条件推奨表などを参照して選定すること。

○真鍮(しんちゅう)、銅、アルミ、ステンレス等に対する切削条件の選定に特に注意すること。

○ドリルの着脱は主軸の完全停止を待って確実に行う。また、ハンドルは必ず外しておくこと。

○ドリル先端がふれ回りをしている状態で作業をしてはならない。ドリルをつけ直すか、ドリルを取り換えること。

○よく切れるドリルを使用すること。切れないと、押付け力が大きくなってドリルが折れる場合がある。

○小片を手に持って穴あけすることは避けること。バイスで工作物をつかみ、バイスの一端をコラムに当て、振り回されないようにすること。

薄板、アクリルのような工作物では、使用するドリルの形状も異なる(ろーそく刃等)ので注意すること。

○材料が振り回されるのは、穴あけ終了時とドリルを抜くときに多い。薄板に穴をあけるときは、木片を下に敷き、一緒に穴あけするとよい。

○ドリル回転中に切屑を手で払わない。頭髪や衣服が巻き込まれないように注意する。

○ドリルに付いた切り屑は、素手で取り除かないこと。

 

(7)帯鋸盤(強力帯鋸盤、ロータリーハンドソー、ベルトソー等)

作業中は、いかなる場合でも手袋を使用してはならない。

○鋸刃の張りが適切であること、亀裂・刃こぼれの無いことを確認してから使用すること。

○素材は確実に固定する。短い素材では固定が不完全になりやすいので、バイス面の他端に調整具を挟むなどしてしっかりと固定する。

○調整・素材の取り付けなどは、機械を停止させて行う。

○運転の際には、鋸刃に手を近づけない。

○工作物の材質、厚さ、鋸刃の幅を考慮して切削条件を選定する。

○無断変速機のハンドルにより、目的に合った回転速度まで上げる。(強力帯鋸盤)

○オーバーロードにならないように速度調節ツマミにより送り速度を設定する。(強力帯鋸盤)

○切断作業を行う途中で異変(鋸刃の折損、プーリーからの脱落、刃こぼれ等)があれば、ただちに機械を停止させること。

○作業終了後は、ハンドルにより回転を下げてから停止させること。(強力帯鋸盤)

○鋸刃の着脱・交換は担当職員にしてもらうこと。

○鋸刃の交換時以外は手袋の使用を控える。

 

(8)鋸盤

○工作物は、取り付け台に平行に固定する。斜めに固定すると、運転中の振動で工作物が外れ、鋸刃が折れる場合がある。

○運転中は、鋸刃に手を近づけないこと。

○工作物の材質に適した鋸刃を選定すること。

○鋳鉄、真鍮(しんちゅう)には切削油を使用しないこと。

○鋸刃の着脱・交換は担当職員にしてもらうこと。

○鋸刃の交換時以外は手袋の使用を控える。

○普通鋼材、真鍮(しんちゅう)、ステンレス等の工作物の材質の違いによる切断圧の調整が必要となるので、担当職員の助言を受けること。

 

(9)グラインダー

○砥石が破壊した場合に重大な事故となるため、砥石の回転面に立って作業しない。

○回転中の砥石に手を出さない。小さい工作物を加工する場合には、治具などで工作物を保持する。

○工作物を受け台に接触させて加工する。

電源スイッチを入れて砥石の回転が十分に上がってから使用すること。

○砥石の側面を用いないこと。

○加工後の工作物は高温になるため、加工面を直ちに手で触れず、十分冷却させる。

○砥石と工作物受けの隙間が適切(2.5 3.0 mm)であることを確認すること。間隔が広すぎると、工作物や指などが巻き込まれる恐れがある。

切削粉が飛び散るので、作業時は防塵マスクを着用し、防塵ガラス、または防護用眼鏡(ゴーグル)も合わせて使用すること。

工作物の材質、研削の程度(荒い研削でよいか、仕上げの研削か)によって研作抵石を選択すること。

○砥石の脱着・交換は、グラインダーと砥石の特別教育を受講した者が行うこと。

 

(10)工具研削盤

○研削する工具(エンドミル、ドリル等)の取り付けは、機械を停止させて行い、はずれないようにしっかりと固定すること。

○研削作業は、砥石の回転が十分に高速になったことを確認してから行う。ハンドル操作は、両手で行うこと。

○切粉が飛び散るので防護用眼鏡(ゴーグル)を、着用すること。

○回転中の砥石に手を近づけないこと。

○砥石の脱着・交換は、グラインダーと砥石の特別教育を受講した者が行うこと。

 

(11)湿式切断機

○極薄砥石の取り付けは砥石押さえで確実に取り付けること。

○工作物は確実に固定すること。

○切断砥石と工作物の位置関係を確認し、スイッチを入れる。切削液の液量と位置を調節する。

○必ず本体カバーを下ろして切断作業を行う。

 

(12)回転砥石を使用した切断機(高速切断機、高速カッター等)

工作物の固定は確実に行うこと。

○工作物を固定及び着脱する際は、砥石の回転を完全に停止させること。回転中の砥石に工作物がふれると、大けがをする危険がある。

工作物と切断用砥石との位置関係を確認してから電源スイッチを入れること。

○切断中は火花が飛び散るので、十分注意すること。特に周辺には燃えやすい物を置かないこと。

○回転部に過剰な負荷がかからないように切断速度を調節すること。

○砥石の厚さが薄く、割れやすいので無理な負荷はさけ、回転体の前面には立たないこと。

○砥石粉や鉄粉が目に入りやすいので、防護用眼鏡(ゴーグル)を着用する。

○砥石の脱着・交換は、グラインダーと砥石の特別教育を受講した者が行う。

切断用砥石の取り付けは、砥石押さえで確実に取り付けること。

 

(13)電動ドリル(大型ハンドドリル、ハンドドリル等)

○作業中は、いかなる場合でも手袋を使用してはならない。

○太いドリルの場合工作物に食い込むと、ハンドドリル本体が回されるので、しっかり保持すること。

○ドリルは工作物に対して直角にする。もし傾いていると、細いドリルの場合折れて大けがをすることがある。

 

(14)ベルトサンダー

切粉が飛び散るので、必ず防護用眼鏡(ゴーグル)と防塵マスクを着用する。
○ベルトの回転速度が安定してから加工を始める。
○加工物を押さえつけすぎないよう気をつける。
○あまり角のとがった物を加工しようとすると、ベルトが破れることがあるので気をつける。

○加工物は熱を持ちやすいので、やけどなどに注意する。
○研磨粉が周囲に飛散するので、必ず換気をおこなう。また、近くに可燃物がないか注意する。

○作業を一時中断するときは、必ず電源スイッチを切る。
○研磨するものは、はじかれたり巻き込まれたりしないようできるだけ固定する。

 

(15)ディスクグラインダー

○ディスクグラインダーを使用する際は、砥石粉や鉄粉が目に入るのを防ぐため、防護用眼鏡(ゴーグル)を着用すること。

○工作物に当てる砥石の位置により、切屑の飛ぶ方向が異なるので、人やウエス等の可燃物にかからないよう周囲の状況に十分注意すること。

○砥石は破損しやすいので、乱暴に扱ったり、無理な削り方をしないこと。

○砥石の交換は、グラインダーと砥石の特別教育を受講した者が行う。

 

(16)プラズマ切断機

○トーチを振り回さないこと。

○感電、火傷防止のため、皮製の乾いた手袋を着用すること。

○遮光付防護眼鏡を、着用すること。

 

(17)アーク溶接機(交流アーク溶接機、炭酸ガスアーク溶接機、TIG溶接機等)

○感電、火傷防止のため、皮製の乾いた手袋を着用すること。

○厚手の作業服を着用するとともに、絶縁の完全な靴(ゴム底)を履くこと。

○皮製の足カバー、前掛けを着用すること。

○遮光面(紫外線防止色眼鏡付き)を必ず使用すること。

○溶接棒ホルダーの絶縁物の破損、ネジのゆるみ、溶接ケーブルの損傷などがないかを点検するとともに、アース線の接地を確認すること。

○溶接中、火花が飛び散るので、作業環境に留意すること。

○溶接終了後も、溶接部付近は高熱を発しているので火傷しないよう注意すること。

○アーク溶接には特別教育が必要です。使用したい場合は、担当職員に相談すること。

 

(18)教育用溶接ロボット

○運転に際してはプログラムを入念に点検し、加工手順を確認する。

○必ず溶接可ボタンをOFFにして、空運転を行う。

○運転する場合は、周囲に注意し運転する旨を伝えてから行うこと。

○運転中は、遮光面(紫外線防止色眼鏡付き)を必ず使用すること。

運転中、火花が飛び散るので、作業環境に留意すること。

○感電、火傷防止のため、皮製の乾いた手袋を着用すること。

○運転終了後も、溶接部付近は高熱を発しているので火傷しないよう注意すること。

 

(19)抵抗溶接機

○感電防止のため手袋を使用すること。

○溶接するものの大きさ(厚さ)に応じて、適切な電流値を設定すること。

 

(20)アセチレンガス溶接・溶断機

○ガスボンベの元栓の開閉にはハンマー等(金属類)で打撃してはいけない。

○アセチレンガスのボンベは立てたままで使用すること。

○酸素ボンベの元栓には、油脂類を絶対に付着させてはいけない。

○革手袋、保護眼鏡を着用すること。

○トーチを振り回さないこと。

○点火時の火傷に特に注意すること。

○作業終了後も、溶接・溶断部付近は高熱を発しているので火傷しないよう注意すること。

○ガス溶接・溶断には資格が必要です。使用したい場合は、担当職員に相談すること。

 

3. 注意を要する作業

(1)ハンダ付け作業

○都市ガスと塩化亜鉛等のフラックスを用いるため、作業周囲の換気と可燃物に注意すること。また、フラックスは素手で触らないようにすると。

○加熱したはんだごて等からフラックスが飛沫となり飛散することがあるので気をつけること。

ハンダ付け作業は、手袋を着用して火傷に注意すること。

 

(2)鋳込み作業

○上衣、ズボン、靴、手袋はきちんとしたものを着用し作業すること。サンダル履き等で作業してはならない。

○注湯、運搬作業は、必要に応じ、安全靴、ヘルメット、保護メガネ、保護手袋、足カバーを着用すること。

○作業は十分広い場所で行い、作業場及び通路には物を置かないように整理整頓に心掛けること。

○炉に溶解原料(ホワイトメタル等)を入れる場合は、予熱して、水分を十分に乾燥してから静かに入れる。

○炉の周囲は、床面に水分がないように注意すること。

○何らかの原因で溶湯が周囲に流出した場合、あわてず、凝固してから処理すること。(特に水をかけると危険である)

○引火性、爆発性の品目、及び油脂等の可燃物は炉に近づけないこと。

○換気扇等を回して室内の換気に努める。

 

 (3)けがき作業

○定盤の上面は、常に清掃しておく。特に、作業前には切り粉などがないように、必ずウエスで拭く。

○定盤の上に工作物を置くときには、重心に気をつけ倒れないようにすること。

○定盤の上で工作物を転換するときには、指を挟まれないように、注意すること。

○定盤に転がりやすい物を置くときには、適当な止め木などをすること。

○豆ジャッキを使用するときには、はずれないように当て位置を選定すること。

○工作物のバリに注意すること。

○トースカン使用後は、針を下向きにし心棒と平行にしておく。